その昔、『石橋を叩いて大儲け「競馬投資法」が見つかった』という本があった。内容は至ってシンプルで、枠連１番人気を倍々ゲームで当たるまで買い続ける、というものだった。賭け金の額を抑えるため、何レースか見送った後に賭け始めるという作戦も提示している。

　雑誌『競馬最強の法則』１９９４年１２月号に、“読者から寄せられた馬券術検証コンテスト”とゆーのがあり、受賞馬券作戦として、単勝２番人気の馬を追いかける方法が掲載されていた。単勝２番人気を第１レースから第５レースまで倍買いし、的中した時点でその日は終了、全てハズレだったら翌開催日はパスし、翌々開催日に最初からやり直す、という内容だった。

　「競馬投資利殖術・１００円玉ではじめる驚愕の財テク新理論」という本があった（シリーズにもなっている）。出現リズムに着目し、賭け金を抑えながらある程度的中率の高い馬券を継続して買い続けていけば、いつかは必ず利益が出る、という内容のものだった。　（そりゃいつかは当たるがな。）

　いずれも、当たればそこそこ儲かるが、一度ハズレ続けてしまえば取り返しがつかなくなるという賭け方である。　

　このうち真ん中の方法は、最悪の場合におけるその日の賭け金の総額が決まっているのでまだ良いが、当たるまで買い続けるというやり方を取れば、倍買いとまではいかず投資額を抑える作戦を取るにしろ、当たらないことが続いてしまえばすぐに破産する。すぐだ。

　それ以前に、（私の経験から言うと）１回の賭け金が１０万円をも超えるとなると、精神的にきつくなり、怖くてとても馬券など買えなくなる。それでも買わなければ儲からないのだ！、と言われても１０万円以上を賭けた挙げ句ハズレになった場合、次の２０万円以上を買える無神経さを兼ね備えてる人が一体世の中にどれくらいいるのだろう。それもハズレならば、その次は４０万円以上なのだ！

　それと、枠連１番人気を買うにしろ単勝２番人気を買うにしろ、人気順というものは変動してしまうという要素がある。単勝２番人気を買ったつもりが締め切り直前にオッズが動き、結果としてその馬は１番人気あるいは３番人気となり、その挙げ句‘本当の’２番人気が来てしまった日には、ショックから立ち直れなくなってしまう。
　もっとも、これには逆の場合もある。要は自分の買った馬券が当たるかどうかなのだから、締め切り何分前のオッズをもとに買うと決めていれば、期待値は同じである。（かな？）
　だが、いずれにせよ１点買いというのは難しい。オッズが同じ馬券が２点ある場合などザラなのだから．．

　さらに言えば、当たるまで賭け続けるやり方を実際に取れる人など、そう多くはいない。一日中競馬をやっていられるとは限らないからだ。勝負レースは極力少なくしないと、物理的に馬券が買えなくなる事態が生ずる畏れがある。２開催日以上にまたがる賭け方を取るのはもってのほかである。２日目は急用ができるかもしれないのだから！

　一つの法則性に従い馬券を買い続け、それで儲ける方法など、ない。もしあったとしても、心臓が破れるほどの極限状態を味わわなければならない。（それを味わってみたいのだ、という人もいるかもしれないが、やめといた方がいい。）

　ところが、そう言いながらここに新たな倍買い法を提示しようとしている。‥同じだ。当たればそこそこ儲かるが、一度ハズレれば大損こくというものである。それでも提示する。なぜか？

　２００２年６月１５日、ＪＲＡは馬番号三連勝複式（３連複）馬券の発売を開始した。まだ始まったばかりの、この馬券の可能性を探るために‥（なんちって）。

　（やーねえ、必勝法のつもりよ。）

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